花と雪と岩の山を行く

13 - 14 August 2017, "Mt.Kaerazu - Mt.Karamatsu" North Alps Japan
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ハクサンコザクラ咲く「大出原(おいでっぱら)」にて
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チングルマの群落

夏山シーズンの最盛期を迎えても、山仲間の休日は揃わないし、不順な天候が回復する気配を見せない。こんな時はどうしたものか悩むのだが、自分のひらめきに任せて行動した方が、結果オーライとなることが多い。
[2017年8月13日〜14日、北アルプス後立山連峰にて]



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猿倉から鑓温泉に向かう道

杓子岳双子尾根南面を巻く登山道は残雪が多く、夏道は雪渓によって幾重にも寸断されていた。
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杓子沢出合のクレパス

猿倉から小日向のコルを越えて鑓温泉まで、6時間の歩程だ。
この時期としては珍しいくらいの残雪で谷は埋まっていて、雪渓上に撒かれた赤いペイントに従い、夏道から離れて紆余曲折したルート歩きを強いられた。
硫黄臭の広がる鑓温泉は、山小屋の中もキャンプ場も大勢の登山者で溢れていて賑やかである。
場末の安い温泉場という雰囲気で、情緒というものは感じられない。夏山シーズンだけの撤去可能なプレハブ造りであるから、それを望むこと自体無理な相談ではあるが・・
露天風呂から流れ出す排水路に手を入れると、温かく柔らかな水質と湯の花が掌にまとわりついた。
一風呂浴びたい誘惑にかられたが、この先鎖場の連続する急な露岩帯と稜線まで3時間の道程がある。
鎖場では何度も下山する団体と出会い、待機を余儀なくされた。お花畑が広がる大出原まで、急峻で濡れて滑りやすい岩場は、気が抜けない。
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8月13日〜14日の天気図
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本州上空に二つの低気圧が連なって、腰を据えている。
雨が降らなければ幸運で、青空が広がるなど望み薄だ!
どこへ登っても一緒の世界。視界を望めない山行ならば、「岩・雪・花」とコースの面白さで逆手取る方法もある。
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北アルプス後立山連峰「大出原」にて
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「大出原」にて
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後立山連峰稜線「鑓温泉下降点分岐」にて

長く辛い登りで、足はヘトヘトだ。
一瞬開けた青空に「鑓ガ岳2903m」の優美な姿が映る。
疲労困憊で歩く元気はないはずだが、大展望とのびやかな山頂に立つ誘惑にかられた。
重い腰をあげると、稜線は直ぐに深い霧に覆われてしまった・・
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後立山連峰「天狗平・天狗山荘」にて
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1mを超す残雪に覆われた「天狗平」

山の頂稜にこれほどの雪田が残るとは、驚かされる。
天狗平のキャンプ場には、20張りほどの天幕が設営されていた。
「天狗山荘」は、人気が高い白馬三山の縦走路から少しばかり離れているせいか、盛夏の北アルプスであっても静かな山の一角である。登山者の交差が少ないためか、この山小屋は売店とキャンプ場の管理だけで、宿泊施設の営業はなされていない。
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後立山連峰「天狗平」稜線
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後立山連峰「天狗平」稜線にて

黒部渓谷を隔てて、西方に剱岳と立山連峰が広がる。
早朝の一時、南方に目を向けると、鹿島槍ヶ岳双耳峰の奥には槍穂高連峰も望めたが、歩き始める頃には皆姿を消していた。
天狗ノ頭2812mまでは、なだらかな稜線漫歩の道が続く。登山道の両側には、目立たぬ小さなコマクサの花が点在し彩りを添えていた。
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北アルプス後立山連峰稜線  「天狗ノ頭2812m」〜「天狗ノ大下り」

天狗ノ頭を過ぎると、不帰キレットへの大下りが始まる。
眼前には、荒々しい不帰ノ嶮の岩峰が迫り、気を引き締められる。
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後立山連峰「天狗ノ大下り」にて

不帰キレットまで、300mを超す下りだ。
砂礫混じりの道で浮石も多く、急な岩場には鎖が少ないので、少し緊張させられる。
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「不帰ノ嶮」を行く

不帰キレットから、不帰一峰・二峰・三峰の岩峰群への登りが始まる。
一峰の頂までは、黒部側に広がる緩斜面のハイマツ帯を辿る道で、案外あっけなくピークに立ってしまう。
ここから、一峰・二峰のコルに大きく下る。鎖に頼りながら、滑りやすそうな急な岩場を下降していく。
鞍部に降り立つと、二峰の岩場が被さるように迫り、困惑してしまう。
二峰の通過が、不帰ノ嶮の核心部なのである。
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後立山連峰「不帰ノ嶮」にて
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「不帰ノ嶮」にて
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「不帰ノ嶮」にて
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「不帰ノ嶮」にて

先行する登山者の行動を目で追いながら、急峻な岩場を右に左に交わし、時に垂直な岩壁を鎖に助けられながら攀じ登る。
一・二峰鞍部からの登山ルートは、初め黒部側の岩場を縫うように進み、ハングした岩壁に行く手を遮られと、頂稜の左手を絡むように巻き込んでゆく。
やがて信州側に切り開かれたバンドに導かれながら、垂直の岩稜群の基部をぐんぐん上がっていく。
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「不帰ノ嶮」にて
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「不帰ノ嶮」にて

鉄梯子に取り付き、かぶり気味の岩塊を乗り越えてしばらくすると、二峰の北峰ピークへひょっこり辿り着いた。
北峰は小広い頂で、安堵できる場所である。
不帰二峰北峰〜南峰間は、円弧を描いた緩やかな岩稜で、この先緊張させられるような悪場はない。
南峰から三峰群への登りは、頂を踏むことのない岩稜基部を巻く道で、知らぬ間に唐松岳山頂に近付いていた。
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「不帰ノ嶮」にて
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不帰一峰・二峰・三峰を越え、登山者で賑わう「唐松岳2696m」に近付く

唐松岳山頂は、老若男女の登山者で溢れていた。
稜線はガスに覆われて展望は皆無だが、行き交う登山者が途切れることはない。
唐松岳頂上山荘にて水の補給をして、長い八方尾根を下る。
登山者の交差は絶えることがなく、幾度となく待機を余儀された。
平凡な砂礫混じりの道が続くが、気が付けば道の両側には花々が乱舞していた。
登り下りする登山者は、歩くことだけに精力を使い果たしているのか、可憐な花に目を向ける人は少ない。
上ノ樺・下ノ樺、そして八方池辺りまで雪田が残っていて、その周辺では思い思いの姿で登山者達が寛いでいた。

八方池は、池を取り囲むように木道とベンチが設置されていて、ずいぶん整備されたようである。
岩塊に腰掛けながら、厚い雲の中に、見えるはずもない北アルプスの大展望を描いていた。
人工物がこうも多いと、八方池からのロケーションは台無しだろうに・・
寛いでいると、若い登山者が近付き声をかけてきた。
「昨日は上高地で、穂高を歩いてきました。」
「今日は唐松岳に泊まり、天気は崩れますが不帰ノ嶮を越えるつもりです。」
「帰ったら、五竜も登るつもりです!」
聞いていると、北アルプスの梯子をしているようである。
羨ましい限りの若さである。
事故を心配する必要性は感じられないが、若さに不安を覚えるのは、私の嫉妬心かもしれない。
あまり無理をしないようにと、一言彼に声をかけた。
このところの不順な天候で、遭難事故が起きなければいいのだが、広い山の世界を見つめながら気にかけていた。
八方池山荘に到着すると、観光客で溢れていて広場は賑やかである。周辺を散策する人も少しは見かけたが、大半の人々はスキーリフトとゴンドラを使い下山するようである。
私達もその人々に加わり、帰路に着いた・・

二日間ともに曇天の日々である。
好展望には恵まれなかったが、猿倉から稜線までの長く辛い登りでは、曇天も疲れを癒す働きをしたかも知れない。
花と雪と、変化に富んだ岩稜を満喫した楽しい山歩きである。
喧騒した盛夏の北アルプスであっても、静寂を味わえる山は存在するのである。
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△ 登山記録 △

8月13日  天気=曇天
 八方バスターミナル6:00 __ 猿倉6:22着~6:47 __ 
 鑓温泉分岐7:00 __ 小日向のコル __ 鑓温泉小屋11:30~11:50
 __ 稜線14:53~15:05 __ 天狗山荘15:40着!
8月14日 天気=曇天、時々晴れ間も広がる
天狗山荘6:20 __ 天狗ノ頭6:45~6:55 __ 
 不帰キレット8:15~8:25 __ 不帰一峰8:55~9:15 __
 不帰二峰・北峰10:13~10:15 __ 不帰二峰・南峰10:30~10:40
  __ 唐松岳11:35~11:50 __ 唐松岳頂上山荘12:05~12:15 __
 八方池13:55~14:10 __ 八方池山荘15:00 __
 スキーリフトを使い兎平へ __ ゴンドラにて八方駅に下山
 *八方バスターミナル〜猿倉 @930円
*天狗平キャンプ場・天幕代 @1000円
*八方アルペンライン(八方池山荘〜兎平〜八方駅) @1550円 片道

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by furaibou1952 | 2017-08-15 21:42 | 登山