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徳本峠越え

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無造作に置かれた古い書籍とメモ帳
ひょっとすると、W.ウェストンの自筆が残されているのではないかと錯覚してしまう・・ 1982年10月31日、北アルプス島々谷「岩魚止小屋」にて

 愛読している「荒野にて」のブログを読んでいたら、徳本峠の題字が目に飛び込んで来て、懐かしさで胸が一杯になってきた。
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「岩魚止小屋(岩魚留ではない)」にて、山仲間と共に
山女子(山ガール)に目を留めずに、看板と室内に目を凝らして欲しい・・



山岳会に入会して間もない頃、会の個人山行として「島々宿からの徳本峠越え」に誘われ、真っ先に参加の返事をした記憶がある。近代登山の黎明期以前に開かれ、W.ウェストンや多くの岳人が通った古い峠道なので、大いに期待して入山したのだが、2時間余りの単調な林道歩きで興ざめてしまい、二俣から南沢の山道に変わっても悶々とした気持ちが続いていた。
どのくらい歩いたのか記憶にないのだが、明るい木立に囲まれた静かな森の平坦地に、岩魚留小屋は建っていた。ここで休もうという仲間の合図で、各自が珈琲やイワナの骨酒を頼み、中でゆっくり寛ぎさせてもらうことになった。最初に目に飛び込んできたのは、天井に吊るされたランプと部屋の中程の囲炉裏からモクモクと涌き上がる白い煙である。小屋の主は控えめで多くを語る人ではなっかったが、山の話で盛り上がる我々を温かい眼差しで見つめていてくれたような気がする。じっと耳を澄ませば川のせせらぎが響き、小枝のすすれあう音が聞こえる。古びた柱や板壁、テーブルや棚に無造作に置かれた書物、囲炉裏に吊るされた鉄瓶や串刺しのイワナ・・・
居心地の良さに酔いしれていまいそうな山小屋の雰囲気である。
1時間余り休憩して、出発時に小屋の入口で記念撮影をした。よくよく見れば、看板はガイドブックに登場する「岩魚留小屋」ではなく、「岩魚止小屋」であることに気付いた次第である。
山小屋での余韻が強く残った為か、徳本峠直下の急な登りを難なくこなし、ほぼ素通りする感じで峠を乗り越し、明神岳や穂高岳の眺めを楽しみながら上高地へ向かった。梓川遊歩道の観光客の賑わいにも惑わされない印象に残る楽しい山行であった・・
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笹原の広がる峠道にて
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徳本峠にて 「穂高岳の展望が素晴らしい!」

その後、ゴールデンウィークの常念山脈縦走の帰路に、明神分岐から徳本峠を越えて新島々に下山したことがある。岩魚止小屋に立ち寄りたいという衝動に駆られたが、先を急ごう!という先輩の声で素通りしてしまった。又ある時は、沢渡からの上高地線が閉鎖され、穂高岳へ入る為に止むなく島々谷からの徳本峠越えをしたこともある。正月山行に於ける上高地からの徳本峠への立寄り・・
いつしか忘れる存在となっていた。
古くから山の世界で云われ続けたことではあるが、山歩き(登山活動)で大切なことは、何処に登ったことではなく、「どのような登り方をしたのか」である。思い出に残る山歩きをしているのだろうか?
その問いかけに答えてくれる山行が、「徳本峠越え」であったような気がする。
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今も変わらぬ雰囲気の「梓川遊歩道」・・

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1983年GW 徳本峠にて
前列中央の若い女性が「徳本峠小屋番の娘さん」で、後列二人の女性は自称「美女連」の先輩旧知の山仲間だ。
by furaibou1952 | 2012-11-19 00:47 | 登山